2020年神奈川県公立高校共通選抜「数学」問題分析

昨日行われた2020年神奈川県公立高校共通選抜学力検査の数学について2019年の問題と比較しながら分析していきたいと思います。

2020年神奈川県公立高校共通選抜「数学」問題分析

生徒達の感想

まずは自己採点を終えた生徒達の感想です。

「問題の構成が変わっていて驚いた」

「パッと見て去年と傾向が違うと感じてしまい焦った」

「いつもと少し傾向が違く、難しく感じた」

「例年の形式と変わって焦ったが、取るべき問題は着実にできた」

「傾向が変わった」との声が多数でしたが、「出題順が変わった」という言い方が適切です。

昨年までは問7で出題されていた平面図形の証明問題が問3の小問集合の一部となりました。

そのため、昨年までは問1~7の大問7問構成だったものが、今年は問1~6の大問6問構成となりました。

問1 計算問題

2019 2020
(ア) 正負の数の加減(整数) 正負の数の加減(整数)
(イ) 正負の数の加減(分数) 単項式の除法
(ウ) 単項式の除法 平方根の計算(簡約化・分母の有理化)
(エ) 平方根の計算(簡約化・分母の有理化) 多項式の計算(分数)
(オ) 乗法公式の利用 平方根の計算(乗法公式の利用)

平方根の計算が2題になりました。

計算問題としては昨年と比べるとわずかに難化と言えますが、全体的な難易度に大きな影響を及ぼすものではありません。

1問も落とせない問題ばかりというのは例年通りです。

配点は各3点・計15点のままでした。

問2 小問集合

2019 2020
(ア) 因数分解 連立方程式の利用
(イ) 2次方程式 2次方程式
(ウ) 2次関数の変域 2次関数の変化の割合
(エ) 不等式の立式 1次方程式の文章題
(オ) 平方根の大小 平方根の利用
(カ) 標本調査の利用 平面図形(円・求角)

難易度的には昨年とほぼ変わらずといった印象です。

(オ)の「平方根の利用」は少し大きめの数が出てきたので面食らったかもしれませんが、問題自体はよくある形です。

配点は各4点・計24点となり、(ア)(イ)が各3点だった昨年よりも合計で2点上がりました。

問3 小問集合

2019 2020
(ア) 平面図形(円・求角) (i) 相似の証明
(ii) 同一円周上の点
(イ) 平面図形(求積) 資料の整理
(ウ) 方程式の文章題 平面図形(求積)
(エ) 反比例の利用(歯車)

昨年まで問7で出題されていた証明問題が問3へ移動しました。

緊張状態の受験生には少しのことでも大きな影響がある場合があります。

「変化があってもあわてずに」と前もって注意されていても、焦ってしまった生徒がいたようです。

2019問7と2020問3(ア)の比較

証明問題はどちらも穴埋め・選択制であり、難易度に大きな変化はありません。

2020問3(ア)(i)は同一円周上にある点を書きだすという今までにあまり出題されていない形の問題ですが、2019問7(ウ)(正答率2.4%)と比べれば易しい問題です。

また、昨年の問7(イ)に相当する問題が今年はありませんでした。

今年の問3(ア)を平面図形の大問としてとらえれば易化したといえるでしょう。

配点は昨年の問7は小問3問で11点、今年の問3(ア)は小問2問で計7点で問題数減の分だけ配点も減った形です。

2019問3と2020問3(イ)(ウ)(エ)の比較

今年の(イ)は典型的な「難しくはないが面倒くさい」問題です。

丁寧に解けば答えは出せるのですが、一つ一つ確認していかなければので時間がかかります。

後回しにしたほうが、時間が有効に使えたかと思います。

昨年の(イ)、今年の(ウ)はどちらも面積比を利用して面積を求める問題ですが、今年の問題の方が求めやすくなっています。

昨年の(イ)の正答率は2.1%でしたが、今年の(ウ)正答率はそこまでは低くならないと思います。

(エ)の歯車の問題は、神奈川県入試で扱われたことはあまりありませんが、反比例の問題としては頻出のものなので、色々な問題に触れてきた受験生であれば対応できたでしょう。

2020問3(イ)(ウ)(エ)は2019問3と比べると難易度としては易しくなりました。

但し、(イ)で手間取ると時間的に大きなロスとなるので注意が必要でした。

配点は2019問3が計14点、2020問3(イ)(ウ)(エ)の3問で計16点でした。

問4 関数

出題形式は例年通りでした。

(ア)の難易度は例年通り、(イ)の直線の式を求める問題は易化しました。

昨年は直線が通る2点の座標を求める手間がかかりましたが、今年はその手間がだいぶ楽になりました。

(ウ)も昨年と比べると易しくなりました。昨年のように正答率2.0%ということはないでしょう。

昨年と比べて図形として処理する方法が格段に見つけやすくなりました。

配点は昨年と変わらず計14点です。

問5 確率

関数と同様、出題形式は例年通りでした。

難易度は昨年より易しくなったという印象です。

今年の(イ)は、例えば「B-Gが当てはまればG-Bも当てはまる」タイプだったので、細かい場合分けが必要だった昨年の(イ)(正答率7.8%)と比べると解きやすくなりました。

配点は昨年と変わらず計10点です。

問6 空間図形

こちらも出題形式は例年通りでした。

(ア)(イ)の難易度は同程度というところでしょうか。

(ウ)は昨年と同様、表面上の最短経路を求める問題でした。

展開図が昨年と比べれば書きやすく、昨年ほどの低い正答率(1.7%)にはならないでしょう。

配点は昨年と変わらず計14点です。

総評

出題順の変更はあったものの、出題形式に大きな変更はありませんでした。

全体的な難易度は易化と言っていいでしょう。

昨年の問題にあった、正答率が3%以下になるような難問(昨年は4問ありました)がなくなった印象です。

合格者平均点は昨年の50.3点から5~10点程高くなるのではないでしょうか。

また、昨年の入試のように80点以上を取るのが異様に難しいといったこともなさそうで、数学が得意な生徒と苦手な生徒である程度の差がつきそうです。

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